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December 15, 2007

ゲット・アウト

春------。
南からの風が、遠い彼方から命の気配を運んでくる。
薄暗い穴の中で、海の男達は目を覚ます。街に飽き、生活に疲れ、心に怠惰と怒りを抱く季節が終わったことを知る。
誰からともなく、男達は海へと向う。南の風に誘われるように白い砂の上に立ち、冷え切った心と体にそれを受ける。輝く海を見つめ、波が浜に踊る音に耳をかたむけながら、自らの命を確かめる。
波はまだ幼い。少女の胸のように固く、穏やかかつ気紛れで、時としてぎこちない。
それが生きる者の義務であるかのように、男達はサーフボードに乗って沖に出る。波飛沫は肌を刺すように冷たく、その新鮮なひらめきが忘れていた何かを思い出させてくれる。
波間には、懐かしい笑顔が待っている。いまはそれだけでいい。海と仲間達の笑顔があれば、あとは何もいらない。
もし運がよければ、まだ日の高いうちに一本か二本、海の女神がささやかなうねりを与えてくれるだろう。そのとき男達は、失ったものをひとつずつ寄せ集め、こわれかけた自分自身を再生することができる。

「白いサーフボード」 柴田哲孝著  第一章 ゲット・アウトより

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